第三話:置いてけぼりの想い

12/31
前へ
/195ページ
次へ
なんでシンが彼女の名前を知っているのかは最早愚問で、きっと全従業員の顔と名前もその頭に入っているのだろうと納得することにした。 「え、でも待って……」 田辺さんと福原美咲さん。 苗字が違うということは、そういうことなのだろうけど……。 「美咲さんはあなたの顔を知らないのですね?」 「……まぁな。あの子がまだ俺を父親だと判断出来る前に女房とは別れちまったからな」 そうだったんだ。 それなら父親である田辺さんのことを美咲さんが知らなくてもおかしくはないし、田辺さんが成長した娘の写真を撮りたがるのも分かる。 「美咲が有名なブランドの店で働いてるって人づてに聞いてな。見てみたくなったんだよ」 あごヒゲをジョリジョリと触りながら微笑む田辺さんは、きっと美咲さんが働いている姿を思い出しているのだろう。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加