第三話:置いてけぼりの想い

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本来なら、こんな風に娘を思う父親の姿は美しいものなのかもしれない。 けれど私には、そう思えない事情がある。 「……お店の方たちが気味悪がっているので、もう止めてもらえませんか」 私の口から出たのはその事情からくる私情を挟んだものだった。 でも、スタッフさんも嫌がっていたのは事実だし、正しい忠告をしているという気持ちもあった。 「……そうだよな。美咲にも迷惑掛けてんなら止めないとな」 寂しそうに眉を下げた田辺さんを見て少し胸が痛くなったけれど、私は蔑むような目で田辺さんを見つめていた。 「もうここには来ねぇから……最後に少しだけ美咲に会わせてもらえないかな。大きくなった美咲に離婚して離れたことを謝りたいんだ」 「――!?」 ギリッと奥歯が軋むほど噛みしめ、爪が食い込むくらい拳を握りしめた。
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