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「副社長っ!」
頭を押したまま放してくれないシンに抗議の声を上げると、代わりに田辺さんが口を開いた。
「副社長さん、もう放してあげてよ」
その言葉に軽くなった頭を上げると、さっきまでの威勢の良かった田辺さんはおらず、そこには背中を丸めてがっくりと肩を落とした田辺さんがいた。
「きっと美咲も秘書さんと同じことを言うだろうよ。ただ血が繋がってるってだけで、今まで育てた恩すらない男が父親だなんて言って突然現れたってな」
そうだ、その通りだ。
母親に種だけ残した男なんか、父親じゃない。
苦労して一緒に育ててこそ父親と呼べるのだ。
「……それは分かりませんよ?」
「え?」
肩を落とす田辺さんにシンが腕を組んで口を開いた。
「今のは秘書の意見であって美咲さんが同じ気持ちとは限りません」
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