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田辺さんがいなくなった小会議室で、私は再びシンをキッと睨み付けた。
「――最初から全部分かってたの?分かってたのにわざわざ私に田辺さんと話をさせたわけ?」
そうだ、シンは全て知っていたんだ。
私のことを調べたくらいだから、あのお店のスタッフ全員について調査すれば、おのずと美咲さんの父親が田辺さんだと辿り着くだろう。
「……どうしてよ?美咲さんは父親に会いたい、と思っているんだからお前もそうなれ、とでも思ったの?」
もっと広い心で思いやれ、とでも言いたいのだろうか?
だったら余計なお世話だ。
それこそ、人の気持ちなんて他人には理解出来ない。
「私の気持ちなんてシンには理解出来ない!」
溜まっていた涙がボロッと溢れ出し、力の抜けた膝がカクンと折れて私は床にへたり込んでしまった。
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