第三話:置いてけぼりの想い

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「――……落ち着きましたか?」 散々マコトさんの胸で泣いたあと、今のこの状態をどうしようかと狼狽(ウロタ)えていたら、マコトさんが笑い声を交えながらそう声を掛けてくれた。 「百合音さんが泣いていて初めは驚いたけど、不謹慎ながら役得だなぁって……ちょっと嬉しかったです」 「ふふ……そうだったんですか?」 「そうだったんです」 おどけたようにそう笑い声を上げるマコトさんの笑顔を見たくて、酷い顔だろうとは思ったけれどハンカチで涙を拭うふりをして顔を上げた。 ――キュン 目を細めてふわりと笑うマコトさんの笑顔に、胸がキュッと反応した。 やっぱりこの笑顔が好きだなぁ、なんて思ったけれど、私が抱きついたせいでマコトさんまで床に膝をついていたことに気が付き、今さらながら慌てた。 「ご、ごめんなさい!マコトさん立ってください」 そう言って先に立ち上がり、手を差し出すとマコトさんはスッと手を取り、ほとんど体重をかけずに立ち上がった。
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