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そして――、
「あっ」
そのまま私を抱き寄せた。
私の背中に腕を回したマコトさんが少し力を入れる。
「百合音さん、ごめんね」
「え?」
「もう一人の僕が百合音さんを泣かせたんでしょう?入れ替わった時、目の前にいた女の子が泣いてること……たまにあるから」
ごめん、とまた呟いたマコトさんの背中に私も自然と腕を回す。
「違うんです。泣いていたのは勝手だった自分に気付かされたから、なんです。シンのせいでも……ましてマコトさんのせいでもありません」
そうだ。
確かにシンが理解してくれないことに腹は立てたけれど、それはただの八つ当たりで、本当は身勝手だった自分への嫌悪感から涙が溢れたのだ。
「私の方こそ……ごめんなさい」
マコトさんに、それからマコトさんを通して視ているであろうシンに対して謝罪した。
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