第三話:置いてけぼりの想い

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「笑っちゃってごめんね?でも僕は泣いてる百合音さんよりそうやって元気にしてる百合音さんの方が好きです」 「――すっ!?」 もちろんマコトさんが恋愛の意味で好きと言ったわけでないことくらい分かってる。 でも、私の好きな笑顔でそう言われたら、ドキドキしてしまうのは止められなくて。 「顔真っ赤ですよ?」 「わ、分かってます」 「僕が“好き”って言ったから?」 「――ッ」 頭に乗せられていた手がするりと頬まで下ろされ、火照った顔にマコトさんのひんやりとした指先が気持ち良くて自然と目を閉じた。 ……けれど、すぐに開いた。 頭では分かっているはずなのに、勘違いして色目を使うこの体を憎く思う。 「百合音さん」 「あーあの……違うんです」 何が違うのか自分でも分からないけれど、必死で誤魔化してこの場から逃げ出した私は、臆病者の負け犬だろうか。
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