第三話:置いてけぼりの想い

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私のため息の理由を勘違いしたマコトさんが、体を翻そうとしたのを手首を掴んでとめる。 バチッと手が弾かれ、しまったと思った。 いや、これを望んでここまで来たんだから結果としては良かったけれど。 もう何だか訳が分からなくなってきた。 「……シン?」 人格交代したはずなのに俯いたまま動かないシンに声を掛けると、聞き取れないほど小さな声でシンが呟いた。 「悪かった」 「え?」 謝りたかったのは私の方なのに、悪かったと口にしたシンに胸が騒ぎ出す。 「嫌なことを思い出させただろ?田辺さんの前ではああ言ったが、育ててくれなかった名前だけの父親を父親だと思えず、嫌悪する百合の気持ちは理解出来る」 配慮が足りなかった、と謝るシンの言葉に涙が溢れた。 「……シン……ごめんなさい……あり、がと」
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