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シンを誤解していたことよりも何よりも、秘書として副社長であるシンの対処方法を信じられなかったことを謝りたかった。
それから……、シンが私の気持ちを分かってくれていたことも嬉しくて――。
「泣くな」
「う……うん……ごめん」
「胸は貸してやらないぞ?俺はマコトじゃないからな」
「――っ!ばっ、バカ!!」
ブンッと掴んでいた手首を放し、エレベーターを先に降りると、背後でフッと笑い声が聞こえた。
けれど振り返る勇気はなかった。
やっぱりシンには全て視えていて、マコトさんとの会話も筒抜けなんだと思うと、恥ずかしさと共に複雑な感情が胸を過った。
「百合」
「なっ、何?」
「夕食はまた冴子とするのか?」
「え?えーと……冴子さん今日は用事があって遅くなるみたいだから――」
「じゃあ十九時にダイニングルームへ来い」
驚きで声を失なう私に、シンが「返事」と不機嫌そうに促すので、「はい」と了承した。
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