32人が本棚に入れています
本棚に追加
「嘉納くん」
「……。なに?潤?」
一瞬、がっかりした顔をした嘉納くんだけど、
すぐににっこり笑って私の顔を見た。
「あのね?今日帰り、映画見に行かない?
嘉納くんが見たいっていったの、始まってるし」
「そうだな。
飯食ってレイトショー、でいいか?」
「うん」
嘉納くんは笑ってる。
でも私は、心の中でため息ついてた。
仕事が終わって、一緒に会社を出る。
映画館があるとこまで電車で二駅移動。
乗ると、嘉納くんはさりげなく、
私をドア側へとやった。
身長が一五〇を切ってる、
ドチビの私にとって満員電車は危険地帯。
人に埋もれて息すらできなくなりそうになる。
そんな私を嘉納くんはいつも、庇ってくれる。
私が潰れないように、
包み込むように壁に突かれた腕の間から、
長身の嘉納くんの顔を見上げる。
もう何度、こうやって顔を見上げたことだろう。
最初のコメントを投稿しよう!