【2】 拙さ

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が、それだけでは終わらなかった。 何かおかしい、と思った時、彼女は畳の上に寝かされていた。 なぐさめる男の声は止み、かわりに忙しい息づかいが鼻についた。 いやだ、何をしてるの。 身を捩って逃げようとした。 けれど、しっかり押さえ込まれた彼女の身体は、男の力の前には無力だ。 抵抗する様子を見て取った相手は遠慮なく身体に触り、着物を剥ぐ。 改めて見直した相手の顔は、新郎の兄だった。 背筋に冷たいものが走る。 誰か助けて! 叫ぼうとした口は手で塞がれ、遠慮なく口付ける唇が覆う。気持ち悪くて吐き気がした。 「いい乳してるな」と言って男に乳房をわしづかみにされた。余りの痛さに呻いた。 ばたつく足はあっさり開かれ、付け根を乱暴にいじられ回された。痛さに顔をしかめると、相手はかすれた声で言った。 「濡れてるじゃないか」 ――何を言ってるの! この人! いやだいやだ! 助けて!! やみくもに足をばたつかせ、たたいた、ひっかいた。 爪が相手の眼球を思いっきりえぐる。 「この野郎!」 男は彼女の頬を思いっきり張った。 「せっかくやさしくしてやろう、っていうのに」 大きく脚を広げられ、背けた顔に一筋の光が差す。 「何をしている!」 別の男の声だった。 光の先には、新郎を先頭に幾人の大人たちが揃っている。後ろの方には彼の親は彼女の両親もいた。 助かった。 新郎に向かって手を伸ばした幸子に、彼は吐き捨てるように回りに聞こえるように言った。 「男なら誰でもいいのか」 父親が顔を真っ赤にして憤り、母が視線をそらす。 急場の危機は去った。 けれど、何の助けにもなっていないことを、腹の上で解かれなかった帯以外身を隠す物がない中、仰臥しながら彼女は震えていた。 今日は生涯で一番しあわせな日なのに、別の涙が伝って畳みに落ちた。
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