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この顔では、誰も私が冴だとはわからない。
今までの自分の人生が消えてしまったような寂しさと、直輝に逆らえない悔しさで胸がいっぱいになった。
「冴さん。鼻にガーゼをするから、こっちを向いて。
腫れがひいたら、綺麗な顔になっているからね」
山口さんの方を向いて、鼻にガーゼをつけてもらった。
「リビングに朝食を準備してあるから、食べてきて。
口が開かなくても食べられるように、お粥にしたから。
食事の後、もう一度消毒をするから、ここに戻ってきてね」
「わかりました」
まだ口が開きにくいので、小さい声で答えた。
「じゃ、冴。一緒にリビングに行こう」
直輝が私の腰に手をまわしてくる。
反射的に直輝の手をはねのけてしまった。
しまった……焦って直輝の顔を見た。
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