強くなるという事

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「守る為なら、逃げ回れば良いだろ?お前はきっと、仲間を守るという建前で、人を殺したいだけだ。人を殺して、強くなった自分に酔ってるだけだ。違うか?」 ち、違う……俺は。 だけど、嫌なはずなのに、人を殺せば殺すほど慣れて行って、人よりも強くなる快感を、無意識に得ていたのかもしれない。 俺の心を見透かしたような、男の言葉に、俺はそれ以上反論する事が出来なかった。 「そんなわけで高山真治、奈央さんは俺が頂く。俺の名前は沼沢裕樹、覚えてもらわなくても結構だよ」 そう言って、沼沢という男が、手に巻き付けていた鎖をほどいて地面に垂らした。 内藤さんや里奈さんが持っていた、鎖鎌の鎖に似ている。 違うのは、その両端に分銅が付いている、純粋な鎖分銅だという事だ。 そして……俺がゴクリと唾を飲み込もうとした、ほんの一瞬の時間。 気付けば沼沢は左手を俺に向けていて……。 俺の視界の半分が失われていたのだ。 「さようなら、高山真治」 気付いた時にはもう、俺の右目から上が鎖分銅によって破壊されていて、考える事すら出来ずに地面に倒れていた。 強くなった俺の前に現れた、さらに強い男によって……俺は殺されたのだ。
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