第1章

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 しばらく考えて、決心する。  仕事は受けない。  そうなると、これからやることはひとつだ。  押入に押し込めていた大きめのキャリーバッグを引っ張り出し、中に詰めていた物を全部出す。 「クロ?」 「入れ」 「は?」 「窮屈かも知れないが、入ってろ。猫も一緒にだ。お前が見つからないように外に出るには、今はこれしかない」  困惑しているシロをよそに、猫はすんなりとバッグの中に入って丸まった。  猫が入ったことで、シロも意を決したようにバッグの中で横になり膝を抱える。 「ごめんな、少し我慢してくれ」 「うん」  頭を撫で、バッグを閉じた。  俺は着ていた服を脱ぎ、仕事着に着替えた。  シロをバッグに入れたのは、シロを守ると同時に、俺の秘密を知られない為だ。 「俺がいいって言うまで、喋るなよ」 「わかった」  返事の後、まずは携帯電話を破壊。そしてパソコンも壊した。  部屋を見回す。  俺の生活していた跡は大量にあるが、シロがここにいた痕跡はみつけられない筈だ。  いつ何があってもいいように気をつけていたのだから。  白い粉もそのままにしておく。後であの引きこもりが回収に動くだろう。  シロが入っているバッグを持ち上げ、財布だけを持って駐車場へ行く。  トランクにバッグを乗せ、自身は運転席へ。
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