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中身を見て、俺はがっくりと肩を落とした。
箱いっぱいの白い粉。
「小麦粉?」
シロが箱の中を覗き込み、首を傾げる。
俺はNOと答えて、小分けされているそれを一つ取り出した。
「人間を堕落させるお薬だよ」
こんな物を送ってくる奴は、一人しか居ない。
携帯電話のアドレス帳を開き、目的の人物へと電話する。2コールで相手が出た。
『あ、クロちゃん? 荷物届いたでしょ? お仕事だよーん』
妙にハイテンションな男の声が耳に届く。
「ハゲろ、ひきこもり」
『ヒドッ! んもぅ、仕事斡旋してあげてるのにぃ』
「俺はそっちの仕事は辞めるって言わなかったか?」
『聞いたよ。でも了承した覚えないね』
電話の相手は、楽しそうに言う。
『だいたいさ、『裏』の仕事をそう簡単に辞められるわけないじゃない。俺と組んだのが運の尽き。受けてくれたら、クロちゃんが今望んでるものを報酬として渡すけど?』
「俺の……望んでるもの?」
『部屋、探してるんでしょ? 駅近くの、ペット可な広めの物件』
相手の言葉に、動揺してしまう。
「何故、それを」
『この世でオレが知らないことは、自分が死ぬ日くらいだよん』
実に愉快そうに言う。
ああ、何かムカつく。殴りたい、電話の相手を思い切り殴ってやりたい。
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