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「それで、受けなかった場合は?」
『君の同居人のこと、中央の連中にチクる』
ガン、と壁を殴る。
シロがびくりと体を震わせた。
『あんれ~? 怒った? 怒っちゃった? でもさぁ、オレがこういう人間だって、クロちゃんも知ってるよね? 知っててオレと組んだんだもんね』
知っている。
利用できるものは何だって利用する奴だ。
奴の手で、何人もの人間が地獄を見ているのも、間近で見てきた。
奴が仲間だと思ってくれているうちは、これ以上にないほど頼りになることも。
シロへ目をやれば、猫を抱いて俺の方を心配そうに見ている。
『考える時間をあげる。受けるか受けないか、同居人のことも考慮したうえで決めるといい。一時間後、どうするのかまた電話してね』
言うだけ言って、相手はあっさりと電話を切った。
仕事を受ければ、奴が俺の望む物件を報酬としてくれるという。
けれどそうなれば、仕事中シロを独り……いわシロとネコを置いて出掛けなければならなくなる。
連れて行くにしても、外でシロの正体がばれないとも限らない。
仕事を受けなければ、確実にシロを探しているであろう奴らがここへ来る。早ければ今日中に。
けれど、俺の抱えている秘密や『裏』の世界のことなんて知られずに済むかもしれない。
俺は一人頭を抱えた。
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