十一節

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数日後、ホテルの豪華な生活も終了し、まとめた荷物をイギリスへと空輸した。 税関などがある為あまり送る事は出来ないが、俚乃はその後実家へと一度戻り湊は自分の事をして来ると一日だけ自由な時間を互いに持ったのだ。 明日、日本を発つ。 実家では妹が泣いて喜んでくれた。 湊と結婚する事も、家族全員で理解を示してくれた。 数日後小さな結婚式をすると言われてるので、パスポートを取って置いてと言い置いて、俚乃は会社へと向かった。 何年と通った道を歩き到着すれば、奈津子が待っていてくれた。 「俚乃っ」 「奈津子さん!」 ギュッと抱き合っておめでとうを言われた。 社長には全て伝えたが、会社には自分は実家へと戻るとだけ伝えた。 実家も実は引っ越しをする予定で、今回の事件がどれだけ人の人生を狂わせるかを思い知った。 「では、また」 会社の荷物を受け取り、それを全て奈津子に処分を頼み、俚乃は来たままの姿で会社の社員カードを渡し、お辞儀をすると、一也が頑張れと声を掛けてくれた。 「ありがとうございました」 良い事だけでは無かったけどこの会社にも随分お世話になったなとお辞儀をしてポルゾへ向かう頃には夕方になってた。 ポルゾで池上と一至とお別れをして湊も合流し、笑い合った。 「そろそろ…出ないと」 その湊の声で俚乃も立ち上がった。 「マスターおあいそお願いします」 「…遊びに行くから、そん時になんか食わせてくれ。 だから代金は選別と思って払わなくて良い」 その言葉に甘え店を出た。 二人でタクシーに乗り込み、カバンに入ってる空港券を見る。 二枚の券の氏名は、佐藤俚乃、佐藤湊。 「湊…ありがとう」 俚乃がその名前を見ながら呟けば頭をグンと引かれ胸に納められた。 「いいんだ、誰も後悔はしてないから、俚乃は気に病む事は無いよ」 「うん」 空港に到着すると、俚乃と湊は手を繋いで登場口へと向かう。 「日本とも、暫くはサヨナラだね」 「うん、そうだね」 「不安?」 「…楽しみ、かな?これからの湊との生活に」 「良かった」 持ち物検査を終えて、海外転出届先の現地へ飛んでから手続きをする。 既に住民票は日本籍から抜き、新しいイギリスでフルワークパーミット(労働許可証)を湊が習得し、四年はモデルの仕事を続ける事で永住権が貰える。
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