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ピッ…ピリリ…
と、湊の携帯が鳴り、電話を受けた。
「もしもし?」
「湊!時差があるからこれくらいの時間でかけちゃったよ~」
その声に、周りの二人が固まった。
そう、リオンと呼ばれる女からの着信。
「あ、うん…」
「あれ?どうしたの~?なんか暗い?私と一緒に居れないからって
そんなに暗くならなくても、もう少ししたら側に行くからね?」
「解ってるよ。」
一也は慌てて、目の前にあった紙のナフキンに
鍵谷の事と、今ここで起こっている事は言うなと走り書きして
湊に見せると、コクっと頭を上下させた。
「リオン?今ね飲みに来てて、電話出来ないんだ
後でかけ直してもいい?」
「や!せっかくずっと待って掛けたんだから30分作って!」
「でも、こっちもちょっと話をしないといけないから」
「ダメだよ!私の事嫌いになったの?」
「そうじゃないけど…少しだけ待って?」
「湊、私を捨てるの?グスグス・・・」
「あ~もぉ、泣いちゃダメだって、側に居ないんだから
何もしてあげれないよ…」
ふーっと一也が溜息を付くと
湊の肩を叩き、親指で奥の部屋を指差した
あっちで話せと言うのを理解したらしく、頭を一度上下させて
奥へと消えていった。
「なんだあれ…」
「…性格までは、違うって所ですかね?」
「鍵谷があんな女に負けるのかよ…ったく、解らんもんだな」
ため息混じりに、一也はカランとグラスを傾けて酒を煽った。
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