からくさ 新章

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「お前が演技とかで忘れてるふりでもしてたら ぶん殴ってやるつもりで来たけど…本気で分かってないみたいだし 俺は鍵谷とそのことを話した上で、会うか決めさせる 無理に逢う事を強要しない、そしてお前も約束しろ 鍵谷を忘れている間は、鍵谷の許可なしに会わないと」 「わかった…」 うなだれるように答える湊をよそに、一也は立ち上がり 背もたれに掛けていたジャケットを羽織った。 「俺は一度奈津子とこれからの事を話してみる 明日電話するよ…それでいいか?」 マスターが、首を上下に振ると そう言えば!と、紙に電話番号を書いて一也に渡した 「え?携帯変えるのか?」 「湊の携帯だ…変わったからさ」 「は?いつ?」 「1ヶ月前だよ?」 少し沈黙したあとに、一也が口を開いた。 「…じゃー鍵谷へのメールの返事は誰が書いてるんだよ…」 その言葉に、湊が目を見開く。 携帯を持たせている相手は…国際電話の通じるあの携帯の 契約者は今も自分で、その携帯を預けた相手は… 「え?待ってメールのやり取りはしてたの?」 「一度だけ、お前が帰国した日にいつ会えるか聞いたら もう会えないと、さようならってメールが来た」 「…携帯を持ってるのはリオンだよ…なんでそんな返事…」 頭をもう一度抱え込んだ湊に溜息ながらに一也が口を開いた 「…お前の彼女が黒幕かよ、とりあえず帰るわ悪いがそのリオンって女 調べさせた方が良いぞ?良きにしろ悪きにしろ、このままじゃ 鍵谷が、あまりに可哀想だからな」 「一也さん!」 「なんだ?」 「逢わせて…その子に」 「あぁ、許可さえ出れば会わせるよ」 カウンターに3千円を置くとそのまま 一也はポルゾを後にした。
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