十一節

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慌ただしく翌朝を迎えて、俚乃と両親はテレビを見ていた。 会社では、和也と美津子。 ポルゾでは一至、探偵は車に付けたテレビで湊を見守った。 今日記者会見が開かれる。 フラッシュの中、部屋に入ると一度お辞儀をしてから会見台まで進み、横にあった水を一口含んだ。 「皆様、お忙しい中お越し頂きありがとうございます。 この度、私事ではありますが、俳優から引退する事に決めました。」 そこまで言い切ると、矢の如く質問とフラッシュの嵐の中湊は手を上げると、記者達が口を閉ざす。 「私は愛する人がいます。 その人は、一般の人ではありますが前に会見した女性とは違う人です。」 浮気ですか!?と、質問が飛び湊は苦笑いで首を左右に降った。 「詳しい内容に付いては話せませんが、私個人としては浮気では無いと思っています。 それぞれ捉え方も感じ方も違いますから、それ以上は思うがまま記事にして下さって構いません。 そんな事で壊れるほど、生温い恋愛ではありませんから。」 いつ知り合ったのか、いままでどうやって付き合ってきたのか・・・何年一緒なのか、そんなことが矢次で聞かれるが湊はニッコリと笑った。 「彼女を幸せにすると同時に私も幸せにして貰うために、この仕事を辞めて新しい仕事を始めて行きます。 今まで、私を見守ってくれたファンの方々や、スポンサー、事務所、それに支えられて「松平湊」をここまで押し上げて頂き本当に感謝しています。 そしてこの度この急な引退に対応して頂いた沢山の方々もこの場を借りてお礼を言わせてください。 ありがとうございました。」 そう締めくくって、湊は部屋を出た。 沢山の言葉を投げかけられながらも、彼は堂々とその場を退いたのだ。 「・・・湊」 俚乃は、両手を口へと持っていき、ぐっと涙を堪えた。 自分は泣いていい立場ではない。 一個人として彼を手中に収めたのだ。 引退の悲しみは、ファンの人たちが流す涙で、自分が汚してはならないと考えたのだ。 メールも何通か来て、湊がこれから戻るという旨両親に伝えればニッコリと笑って、来週また来ると言い残して帰って行った。
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