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「ねぇ、湊さんに会いに行かない?」
「…怖い」
「え?」
「その女性の電話の対応が…彼女そのものっぽくて」
「は?何言ってるの?」
「片桐は…仕方ないって思えたけど、湊は
無理っ!そんな風に思えない、怖いの」
「…俚乃」
違うって信じたいのに、日が経つに連れて、もしかしてって
不安が胸に突き刺さってくる。
信じて待っていた一ヶ月連絡も一切なくて
寂しさと不安だけが育っていった。
「あの男何やってんだ!」
と、ちょっと離れた所で部長が溜息を吐いたのを見て
ポロっと涙が落ちた。
部長のその苛立ちがもしかしたら
湊の浮気を確実に確証しているみたいで…涙が流れ続ける。
「俚乃…大丈夫?」
「ごめ、泣くつもりなかったのに…」
「いいよ、昼休みの間側に居てあげるから」
抱きしめられてまた
涙が溢れた。
仕事で大変なのかもしれない
それを煩わそうとは思ってなかった
けれど…こんなに長いあいだ彼との連絡を絶った事もないし
それに、日本に帰ってきて連絡をして来ないのも
俚乃の中では一度もなかった事。
「メール打ってみる…」
「うん、そうした方がいいよ」
********
湊お帰りなさい。
帰って来ているのでしょうか?
一度連絡が欲しいです。
********
連絡を取りたい事だけを伝えたそっけない文章ではあるけど
それを送信したら、すぐに返事が返ってきた。
********
連絡は出来ない。
さようなら
********
という文章に、俚乃が唇を噛み締めた。
携帯を持ったまま、固まる俚乃の異変に気がつき
ごめんと携帯を覗いて、奈津子が叫ぶ
「何この男…アホなのか?
と言うか、俚乃遊ばれたのか?」
苛立つ奈津子を宥め、一也がそのメールを見て深く溜息を落とした。
「とりあえず、会って話すまではこんな物を信じなくていい
解ったな?鍵谷」
「……」
「解 っ た な !?」
半分脅しのような言葉ではあったが、俚乃もそれしか道はないのだから
会って別れを告げられるまでは…湊を信じようとコクリと頭を上下させた。
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