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一度絡まった糸は、解けるどころか
心の奥まで結びつけ
貴方と、ずっと繋がっていると思ったのに。
貴方はその手を離したのですか?
ポルゾに、一也が一人で来ていた。
湊の事を聞くなら、ここが一番手っ取り早い。
けれども、ここのマスターも、湊とは会っていなく
最後に連絡を取ったのは、俚乃と同じで1か月前
パリから連絡があり、涼しいのを自慢してたと言う簡単な内容。
もし、連絡が付いたら、俚乃の前に自分に連絡してくれと頼み
ポルゾを出る事にした。
あんなに惹かれあってた二人が急にこんな形になるのは
どう考えても不自然だった。
何かあるとは思って居たが
それが、翌朝本人の口から真相を語られる事となった。
カメラのフラッシュが、無数に光る中湊が記者会見を開いたのだ。
「松平湊です、一般人の彼女との交際をパリで撮られましたが事実です。
結婚はまだ予定を立ててはいませんが、彼女との恋を成就させる為にも
申し訳ありませんが、これ以上彼女を追い詰めないで下さい。
本気でお付き合いさせて頂いていますのでどうぞよろしくお願いします」
手に持っていたコーヒーカップが
カランと音を立てた後に、ドサリと鈍い音が響き
昼の再放送の様子に、俚乃が会社で気を失ってしまったのだ。
白い天井、会社の医務室。
解ってる…自分が気持ちに耐え切れなくて倒れたんだ。
湊の彼女として…何が足りなかったのかな?
あの、半年は…夢だったのかな?
あんなに、大好きだったのに
「っふ…ううっ…湊っ…」
カーテンの向こうで、一也と奈津子が目を合わせて
その視線を床へと落とした。
どうしようもできない…
俚乃は間違いなく…捨てられたのだから。
あんなに、俚乃に思いを寄せていたように見えたのに
役者は凄いもんだと、改めて一也は思った。
そしてその思いを踏みにじれる男だというのも
「俚乃かわいそうだよ」
「あぁ…解ってる」
バン!と、扉を勢い良く開けたのは、赤嶺だった
「あれ…部長と…瀬良?」
「どうしたんだ?」
「あ、鍵谷が倒れたって聞いて!」
「今は静かにしておいてやれ」
「でもっ!アイツそんなヤツじゃなかった!」
「赤嶺っ!」
地を這うような声にビクッと背中を揺らし
シュンと項垂れて、部屋を出て行った。
「ずびばぜん…」
と、カーテンの向こうから聞こえる声に
気にするなと声をかけ、昼の時間を終えると
二人は持ち場へと戻った。
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