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一也の携帯が鳴り
着信名がポルゾ。
もしかしたら何か解ったのかと電話を取ったら
時間があるなら来てくれないかとの事だった。
「え~?湊さんもいるんでしょ?私が一言言ってやる!」
「アホかお前は…冷静に話し合わなきゃどうにもならん
とりあえず俺が行って状況を確認してくるから
お前は待ってろ。絶対に鍵谷に言うなよ?」
「…ん、解った。でもさ、俚乃を泣かすような事言ったら
次は私も待たないからね!」
奈津子が真剣な眼差しで一也に言うと
わかってると返されて、家を出て行った。
一ヶ月前まではあんなに仲良くしていたのに。
逢えない中にもお互い時間を作りながら文句も言わないで
頑張ってたのに
それが裏目に出たのだろうか?
なんて考えてから深い溜息を落とした。
カラン…と、ポルゾのドアを開くとそこには
湊とマスターが並んで座っていた。
入口の看板は、クローズ
開ける状況じゃないのだと、瞬時に理解はしたものの
湊は旅立つ前となんら変わりのない笑顔で
お久しぶりですと告げてきたのだ。
「座っていいか?」
「ええ、どうぞ」
湊を挟んで左右に一也とマスターと言う形で
マスターは一度中へ戻り一也の飲み物の用意をはじめる。
「すみませんね、湊の奴俚乃ちゃんの記憶だけを無くしてるんです」
「は?」
驚いて湊を見ると、申し訳なさそうに
頬をポリッと掻いて
「…やっぱり、一也さんもそんな反応なんだ?」
「え?まて、なんで鍵谷だけを忘れてるんだ?」
「俺にも解りません、貴方が彼女の上司だと言うのもこの店長に
聞いてやっと理解しましたが、貴方との出会いとかを思い出す事が出来ないんです」
そう、俚乃との接点のある事が一切分からないのだ。
「なんだそれ…事故にでも?」
「残念ながら一切」
ハーと深い溜息を落とし、その原因を考えるも、そもそも俚乃限定で忘れる事など
可能なのだろうかと言う考えに、もう一度頭を抱えた。
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