71人が本棚に入れています
本棚に追加
既に夜の帳は深く辺りを飲み込んでいる。
そんな中、一也は、リオンと呼ばれる女性の出会いと
一ヶ月の短期間に、大好きだという思いに至った理由を聞いて
頭を悩ませていた。
細かい事は、別に良いとしても
今の俚乃との符号点がありすぎる
ストーカーから助ける
彼氏役を買って出た
別れた際の忘れ物を届けに行く…
「湊、忘れ物ってクマのぬいぐるみとかじゃないよな?」
「…クマのぬいぐるみです」
「男は、お前のホテルのカードキー盗んだりとか…は?」
「…なんでそこまで知ってるんですか?」
「いや、鍵谷俚乃もそれでお前に助けられてるからな…」
「え?」
と、突拍子もなく驚いた表情で、左右の顔色を見ると
二人とも同じように首を縦に振るだけだった。
「と言う事は、湊の記憶が俚乃ちゃんの部分だけをその…なんだっけ?
何とかって言う女に塗り替えられていると言う事になるのか?」
と、マスターが言うと一也がコクリと頭を上下させた。
急にガタっと席を立ち、困惑しているのは湊だった
「ちょっと、待ってよ…何それ…なんでそんな事に?
その、鍵谷ってのは、本当に彼女?
二人とも俺を騙してるとかじゃないよね?」
「座れ、お前を騙そうなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
いいか?出会いがまるっきり一緒で、初めてその人じゃなきゃダメで
そう言うセリフをお前は俺達の前でも吐いてるんだ。
ただ、今の彼女は一ヶ月でそうなったらしいが
鍵谷は数ヶ月掛かってる…お前と思いを重ねた時
お前と鍵谷は、芸能人という仕事で線引きしてしまい、お互いに思いを
伝え合えない不安定な時期に俺と知り合ってる」
ポンと一也に肩を叩かれ、やっと湊が腰を下ろした。
「もし、そのリオンに本気になったとしても、お前には責任がある
鍵谷俚乃を振ってやらなきゃならん」
「振るたって…俺の中では」
「悪いが、お前の中での居ない人間だろうが、お前が
ミナミまで使って大事にして来た女だ振ってやるのが筋だろう?」
「…ミナミ、あれ?ミナミを知ってるんだ?一ヶ月前に…企画が打ち切りになったのに」
「お前と、鍵谷が最初に出会ったのはミナミだからな」
「ちょっとまって、その場面思い出せるのに…出会ったのはリオンだ」
「「……」」
沈黙が辺りを包んだその時
最初のコメントを投稿しよう!