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「見れますか?」
杉下は、その傷口が気になる様子。
「此方です。近くの医者に担ぎ込みましたので」
米沢の案内で、医者へと向かう。
そこには、顔に僅かながらも傷の残る女性。
恐らく、正太郎と男谷精一郎が遭遇した彼女だろう。
勿論、この事は主馬も知らない。
「この疵……、偶に代官差配地で起きる当た落事故とは違うなァ……。どンぐれェの距離かでも変わるが、この疵は火縄の口径じゃねェし疵の付き方も違う。さッぱりかッぱり判らねェ」
主馬が見たとしても、疵に関する凶器が記憶には無い様な顔で腕を組んだ。
更に言えば、傷口からの出血が異様に少ない。
刀や槍、弓矢に銃では出血を抑える為には刺したままにする必要が在る。
そうした形跡も無く、誰もが首を捻った。
「取り敢えず、養生所へ運べ。田嶋、お前は米沢と小石川へ行け。杉下と亀山は、この凶器を探せ。草の根を掻き分けてでもな」
無茶を言うが、自白に持ち込むには物証が要る。
その為には、被害者から証言を得ねばならない。
とは言え、被害者は命に別状無いが意識不明の重体と言える。
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