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その臭い消しの意味か、主馬は温石。
いわゆる懐炉に香を入れ、焚き染めて居る様子。
「それで、ヤマッてのは?」
「おや、香を焚き染めて来ましたか。事件自体は、単なる傷害らしいのですが。まだ、概要が掴めてません。先に米沢さんが行ってるとは思いますが……」
傷害なのに、この物々しい捜査陣。
「お前等も来たのか」
どう言う訳か、内村が陣頭指揮を取っていた。
「内村さン、殺られたのは?」
「女だ。幸いな事に命は取り留めるらしい」
どうやら致命傷には、ならなかった様だ。
「杉下さん。あ、こりゃ内村様も。今、検分を終えたところなんですが……。傷口が、可笑しいんです」
傷口が可笑しいとは、どう言う事か。
「つぶさに診たところ、銃に因ると思える傷口に火傷が出来てました」
「火縄銃なら、当たり前えだろ!?」
噛み付く様に、伊丹が話を被せる。
「伊丹、近所を聞き込みしたがな。火縄の銃声を聞いた者あ、誰一人居なかったぜ」
無音に近い銃なら、継次の使う風砲が当てはまる。
だが、継次では在るまい。
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