~最終話~ 木枯しも、さだめも十の御柱

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 その臭い消しの意味か、主馬は温石。  いわゆる懐炉に香を入れ、焚き染めて居る様子。 「それで、ヤマッてのは?」 「おや、香を焚き染めて来ましたか。事件自体は、単なる傷害らしいのですが。まだ、概要が掴めてません。先に米沢さんが行ってるとは思いますが……」  傷害なのに、この物々しい捜査陣。 「お前等も来たのか」  どう言う訳か、内村が陣頭指揮を取っていた。 「内村さン、殺られたのは?」 「女だ。幸いな事に命は取り留めるらしい」  どうやら致命傷には、ならなかった様だ。 「杉下さん。あ、こりゃ内村様も。今、検分を終えたところなんですが……。傷口が、可笑しいんです」  傷口が可笑しいとは、どう言う事か。 「つぶさに診たところ、銃に因ると思える傷口に火傷が出来てました」 「火縄銃なら、当たり前えだろ!?」  噛み付く様に、伊丹が話を被せる。 「伊丹、近所を聞き込みしたがな。火縄の銃声を聞いた者あ、誰一人居なかったぜ」  無音に近い銃なら、継次の使う風砲が当てはまる。  だが、継次では在るまい。
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