~第一話~ 今生の、一重に潜む縁の根

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「お待たせしやした」  どうやら出来上がったらしく、店の者が持って来た様だ。 「これで、お袋さん。安心さしてやれるな」  田嶋が鬼籍に入った後、魂の抜けた様な歳月を雪枝は過ごして来た様子。  どれだけ泣き暮らしたか、知れようと云うもの。 「後は、嫁さんか。せめて、 御家人からは嫁取りしなきゃなあ」  町人から迎える事も在るが、その場合。  与力へは千両、同心でも五百両は積まないと嫁入り。  或いは養子縁組出来なかったと云う。  武士の場合は、金が無くても養子縁組は法に触れずとも出来た。  ただ町人の場合、幕臣に成ろうとした場合は法に引っ掛かった者が多い。  御定書百箇条や武家諸法度により斬罪、武家も切腹と定められている。  諸藩や旗本家中の陪臣であれば、坂本龍馬の実家。  才谷家等が在る。  その網を掻い潜った幕臣と云えば、、勝海舟の家だろう。  彼の曾祖父辺りが座頭金(盲目の坊主に与えられる生活保護を元手にした高利貸し)で儲け、息子を幕臣である男谷家へ末期養子に入れたのが偉人。  勝海舟や、遠縁に当たる幕末第一の剣聖と謳われた男谷精一郎下総守信友の誕生に繋がる。
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