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ーー。
軽いミーティングを終えた俺達は店から寮へと肩を並べて帰宅した。
帰りの道中は誰も口を開かず静かな物だった。
繁華街から住宅街に入った所に佇む二階建ての小さなマンション。
全十部屋あるこのワンルームマンションは店長である恋太郎さんの両親の所有する物件で今は俺達四人と店長以外は誰も住んではいない。
「それじゃあお疲れ様です」
俺は一階の一番手前の部屋一0一号室のドアに手を掛けて三人に頭を下げる。
「おう、お疲れ」
「お疲れ」
「また明日…………」
三人は元気の無い挨拶を疎らにして二階への階段を上がって行った。
俺の真上の二0一号室が祈さん、その隣が朱也さん、二つ離れた二0五号室が蒼志の部屋だ。
今は一階には俺だけしか住んでいない。
「フゥ…………」
俺は自室に入るなりベッドへと崩れ落ちる様にダイブした。
今日は何か疲れたな。
この半年間で必要な物は大体揃えれたがまだまだ淋しい物の少ない部屋で俺は今日を振り返る。
堂島…………アイツは何かを企んでる。
人の居る店の中で平然と服を脱がしたアイツが今日祈さんを見ていた目は異常な執念を感じた。
でも、店での陣形は蒼志さんが整えたし何もしようが無いか…………。
自分の邪推を打ち消した俺は風呂に入った後、コンビニへ晩飯の弁当を買いに行った。
あぁ~めんどくさいな………………帰るついでに寄って行けば良かった。
深夜にもなり人も疎らな店内。
俺は弁当を買う前に少しファッション雑誌を立ち読みする。
これは過去の栄光の名残りだ。
昔一緒に仕事したアイツは元気かな? なんてのを雑誌で女々しくも細かくチェックしている。
一通り元同僚の活躍をチェックし終えた所で雑誌を棚に戻して買い物を済ませる。
あ、そう言えば祈さんもコンビニ寄ってなかったな………………俺と一緒でいつも買い食いなのに。
もしかしたら何か要るかな?
俺は携帯を取り出し連絡する。
コールが一回、二回、三回目で祈さんが出た。
「あ、もしもし? 祈さん? 歩ですけど、今コンビニ来てるんですけど何か要ります?」
≪アユッチ………………ううん、ありがとう…………何も要らないよ≫
酷く塞ぎ込んだ声に胸がチクリと痛む。
「そう………………ですか…………じゃあ、飲み物でも買って行きますね?」
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