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「あ~らら…………こりゃ困ったナイトさんの登場だぁ~」
短い廊下を越えた部屋の奥に奴が居た。
想像通りの物を持ち下卑た笑顔を浮かべて。
その横には口にガムテープを貼られ両手を縛られ涙を流す祈さんが………………。
全身の毛穴という毛穴が開き行き場を無くした怒りの熱が頭の先から抜ける様な錯覚を感じた。
「堂島ぁぁぁぁぁ!!!!!!」
こんなに叫んだのは生まれて初めてだ。
喉が千切れそうになるぐらいに絶叫した俺は土足のまま祈さんの部屋の中へと駆け出しそのまま飛び蹴りを繰り出した。
「ハハァッ!」
蹴りが当たる瞬間、奴は俺の足を意図も簡単に横に払い退けた。
マジ…………かよ?
やけにスローに見えた時間の中で奴が振り上げたナイフが俺の太股に刺し込まれる。
自ら空中に投げ出した体が地面へと落下するまでが覚悟の時間。
後ほんの数瞬で神経が激痛に到達する寸前に俺は自分の出来る事を考えて実行に移した。
「朱也さぁぁぁん!!!!」
開けっぱなしにしたドアの先から届く様に俺は救世主に全てを託して全力で叫んだ。
叫んだと同時の着地。
尻に走る鈍痛で一瞬は紛れていたが期待を裏切らない最高潮の痛みが太股を中心に脳髄を駆け巡った。
「あがぁぁぁ!!!!」
ナイフの刺さる太股を押さえてのたうちまわる俺。
「うるせぇ!!」
そんな俺の太股からナイフを抜き去った堂島が傷口を踏みにじる。
みるみる内に血が溢れジーンズを滲んだ黒ずんだ赤で染め上げる。
「ッッッッ!!」
「ん~~!! ん~~!!」
声にならない絶叫をあげて暴れまわる俺を祈さんが見ながらガムテープ越しの絶叫を放つ。
その時だった。
「祈ぃ!! 歩ぅ!! 何かあったの………………か?」
玄関口に立った朱也さんの声が聞こえた。
……………………。
耳が痛い程の沈黙の後、朱也さんが大きく息を吸う音が耳に届いた。
「テンメェェェェェ!!!!」
寝転んだまま見上げて逆さまに見た朱也さんが手に金属バットを持ちラフな部屋着で絶叫していた。
「チッ! アレはややこしいな」
堂島は大きな舌打ちを一つすると窓を開け放ちベランダから闇夜へ姿を消した。
「歩!! 大丈夫か!?」
駆け寄った朱也さんが訊ねる。
大丈夫な訳が無い………………血は既にジーンズでも吸い切れずに血溜まりを作っていた。
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