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「今救急車呼んでやるからもう少し頑張れ!」
近くに落ちてた堂島が使っていたガムテープを何重にも巻いて軽い止血を施される。
次に朱也さんは救急車を呼びながら手際よく祈さんの拘束を解いた。
「アユッチ! ゴメンね! 私のせいで本当にゴメン!!」
泣き濡れた顔で何度も何度も謝る祈さん。
「ハハハ…………助けに来たつもりだったんですけどヤられちゃいました…………カッコ悪いですね…………祈さんは何もされてませんか?」
「ううん、私は大丈夫だよ…………アユッチが守ってくれたから」
「そっか……………………良か…………った」
無事を確認した途端に俺は意識を手離した。
「歩!!」
「アユッチ!!」
呼び掛ける二人の声を妙に遠く感じながら。
ーー。
ふと暗闇から自然な運びで目が開いた。
見上げた視線の先は真っ白な天井。
最後の記憶からここが病院なのは直ぐに分かった。
「う…………」
血が抜けた後遺症か酷く鈍る体を起こす。
痛みは……………………意外に無いな。
俺は視界をスライドドアに向けた狙いすましたみたいな丁度そのタイミングでドアが開いた。
「目が覚めたみたいだね…………良かった…………本当に良かった」
入ってきた人物が開口一番に喜びを噛み締める様に呟いた。
「店長…………来てくれたんですか?」
「当たり前だよ…………朱也君から連絡を受けた時は本当に驚いたんだから」
何時もの黒いスーツ姿に何時もの長髪を後頭部だけ括った髪型。
半田 恋太郎店長が何時も通りの安らげる優しい笑顔を浮かべて訪ねてくれた。
それだけで何だか幸せな気持ちになる。
と、そこに遅れて色とりどりの花で美しく飾られた花瓶を持った朱也さんと祈さんが入ってきた。
「おう、歩…………目が覚めたか」
「アユッチ……………………大丈夫?」
そこには蒼志さんの姿は無かった。
「あの……………………蒼志さんは?」
「あ、ああ…………蒼志はちょっと外せない用事があるんだとよ」
随分と歯切れの悪い返事で朱也さんが答えた。
「そう…………ですか」
別に来てないから残念という訳では無いけど少し淋しいな。
でも、その方が蒼志さんらしいと言えばらしいか。
と、そんな事を考えていた時、不意に半田店長が口を開いた。
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