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朱也さんが聞いた限りではそのプランは完璧に近い話だったらしい。
そして、朱也さんと祈さんの二人はそのプランに乗った、というのが俺が気絶してる間の話だそうだ。
「相手を破滅…………随分物騒な話ですね」
話を聞き終えた俺は法に抵触しそうな話に少し思い悩む。
確かに堂島は悪党だ…………それもどうしようも無いぐらいの。
だが、それを裁く事で俺達の中から逮捕者が出るのも嫌だというのが率直な感想だった。
法も万能じゃないのは知っている。
心神喪失を理由に無罪や減刑された殺人者達。
法の隙間を突いて他人から金を搾取する詐欺師。
警察、教師、政治家…………人を導いて助ける立場に居ながら犯罪に手を染める人間。
この世の闇は数え切れない程直ぐ近くで息づいている。
堂島もその中の一人だ。
それを排除する……………………云わば自警団みたいな感じだろうか?
「なぁ、やろうぜ…………歩……………………今アイツを逮捕させても刑務所から出てきた所でまた祈が狙われるかもしれねぇしまた俺達の誰かの血が流れるかもしれねぇだろ?」
様々な思考を走らせ迷う俺に朱也さんが説得の言葉を投げかけた。
「でも………………俺は誰かが逮捕されるなんて嫌ですよ…………」
最後の抵抗。
俺も堂島が憎い…………刺されたからじゃ無く俺が行かなかったら祈さんがどんな目に遭っていたのかを考えれば死ぬ程憎い。
ほぼ参加する方に意志は傾いていたがほんの後一押しが欲しかった。
勇気の一押しが…………。
そんな揺らぎ続ける俺に朱也さんが最後の一押しを出したのはこの直後だった。
「歩……………………確かに俺も逮捕されんのは嫌だよ……………………でもよ? 俺は【自分の家族】が酷い目に遭わされるのはもっと嫌なんだ………………だから…………家族を…………俺達の親父みたいな存在の半田 恋太郎を守る力を俺に貸してくれないか? 頼む! 俺はお前達の為に投げる人生なら惜しくねぇんだ!!」
病室に響く荒々しくも純真無垢な願い。
ああ…………ダメだ……………………やっぱり俺も自分の人生よりもこの人達が大事だ。
あの雪の日に投げようとして助けられた命の意味を見つけた様な気がした。
例えそれが間違った道でも…………。
「分かりました……………………やりましょう! 俺も自分の家族を守りたいです!」
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