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消失彼女
放課後。
ヒロミと僕は、街をブラブラしていた。冷やかしで店を見たり、楽しい時間を過ごした。
「あーっ、面白かった」
「ホントだね」
「ねえ、いつものベンチ、行こ」
「うん」
「私、ジュース買ってくるから、待ってて」
「わかった」
ベンチ。
「ジュン、待った?」
ヒロミの声が背中からした。
「そんなことないよ。テキトーにヒマつぶしてたから」
僕は彼女を抱きしめた。
…あれ?
服が違う。
「ヒロミ?」
「…ヒロミって、誰?」
僕が抱きしめていたのは、ヒロミじゃなかった。
知らない娘。可愛いけど…。
「ねえ、ジュン。ヒロミって誰よ」
「ていうか、キミ、誰?」
バチン!
おもいっきりのビンタが飛んできた。彼女は目がうるんでる。
「彼女に向かって、キミ誰?って、何よ!」
…。
色々話し合って、僕は、彼女と付き合ってるらしいことがわかった。
彼女の名前はシズ。
「ねえ、ホントに、何にも覚えてないの?」
シズの怒りはもう収まっていて、疑問を解くのに必死になっていた。
「うん。僕の彼女は、ヒロミだったんだ。同級生の…」
「私もあなたと同じクラスだけど、ヒロミなんていないよ」
「どういうことなんだろう…」
クラスメイトに電話してみる。
誰もヒロミのことを知らない。
頭が混乱してクラクラしている横で、シズがしょんぼりしている。
「ゴメン。何にも覚えてなくて…」
「そんなの、そんなの、ないよ!」
シズが泣き出した。
僕は彼女を優しく抱きしめた。
「ありがとう…」
…。
「これからどうしよう?」
僕は途方にくれていた。
「私、一人じゃいられない…」
「わかった。今日は付き合うよ」
「ありがとう…」
夕暮れの街を歩く。
「ホント、ヒロミとはいろんなことがあったんだ…」
シズが遠い目になった。
「全部、覚えてないんだもんね」
僕の頭の中で、何かが動いた。
「過去は取り戻せないけど、未来があるだろ?」
僕はシズを抱きしめた。
「これでいいかい?」
「…うん」
僕らは、二人で街をずっと歩いた。
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