第1章

5/6
前へ
/6ページ
次へ
 それはとても温かく、俺はその人の胸の中でゆっくりと目を閉じた。  その後、俺と新しい父さんは一緒に生活をした。  凄いことに、父さんには不思議な凄い力があった。  それは……。 「一樹、お前……また、テストで悪い点をとっただろ?」 「え!? なんでそれを?」 「何回も言っているだろう、父さんに隠し事は出来ないって」  そう、まるで俺の考えていることを読んでいるような力だった。  そのおかげで、俺は何回か痛い目にあった。  でも、悩み事などがあるとき、父さんは俺の心を読んでいつも相談にのってくれた。  悪いことばかりではなかった。  むしろ、俺にとって良いことの方が多かったのかもしれない。  そして、俺が中学生になる頃。  父さんは、病気になった。  もう、医者からは治らないと言われて、俺は泣いた。  余命が宣告されて、父さんは入院せずに、俺と一緒に残りを家で過すことにした。 「なぁ……一樹」 「なに? 父さん?」 「この時代は確かに便利になった、超能力も当たり前となった……だけど、みんなは何か忘れ物をしているような気がするんだ」 「忘れ物?」 「ああ、それは……俺にもまだ分からない、だけど、一樹お前ならその忘れ物をみんなに届けられるだろう」 「……俺が?」  父さんは黙ってその場で頷いた。  忘れ物は何かは分からない。  だけど、それは父さんにとってとても大切な物なんだろう。  分かったよ、そこまで言うなら僕が見つけてやるよ! そして、みんなに届けるよ。 「そう思ってくれると思った……ありがとう、一樹、最後に……この力をお前に託す! だから、必ず……俺の願いを叶えてくれ」  そう言って、父さんは深い深い眠りについた。  ◇◇◇◇◇ 「本当に唐突だもんな……父さんは」  この託された力で俺は、良い事もあったし、悪い事もある。  だけど、そんなことはどうでもいい。  父さんが俺のために、与えてくれた力。  その事実が俺にとって、嬉しいことだから。 「それじゃ……そろそろ帰るよ、またな、父さん」  そう言って、俺はこの墓から去って行った。  さて、帰るとするか俺の家に。 「やばいな、かなり遅くなっちまったな」  いろいろと考えているうちに、時間帯は完全に最終下校時間は過ぎていた。  このままでは、補導の対象だ。  そうなると、厄介だ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加