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それはとても温かく、俺はその人の胸の中でゆっくりと目を閉じた。
その後、俺と新しい父さんは一緒に生活をした。
凄いことに、父さんには不思議な凄い力があった。
それは……。
「一樹、お前……また、テストで悪い点をとっただろ?」
「え!? なんでそれを?」
「何回も言っているだろう、父さんに隠し事は出来ないって」
そう、まるで俺の考えていることを読んでいるような力だった。
そのおかげで、俺は何回か痛い目にあった。
でも、悩み事などがあるとき、父さんは俺の心を読んでいつも相談にのってくれた。
悪いことばかりではなかった。
むしろ、俺にとって良いことの方が多かったのかもしれない。
そして、俺が中学生になる頃。
父さんは、病気になった。
もう、医者からは治らないと言われて、俺は泣いた。
余命が宣告されて、父さんは入院せずに、俺と一緒に残りを家で過すことにした。
「なぁ……一樹」
「なに? 父さん?」
「この時代は確かに便利になった、超能力も当たり前となった……だけど、みんなは何か忘れ物をしているような気がするんだ」
「忘れ物?」
「ああ、それは……俺にもまだ分からない、だけど、一樹お前ならその忘れ物をみんなに届けられるだろう」
「……俺が?」
父さんは黙ってその場で頷いた。
忘れ物は何かは分からない。
だけど、それは父さんにとってとても大切な物なんだろう。
分かったよ、そこまで言うなら僕が見つけてやるよ! そして、みんなに届けるよ。
「そう思ってくれると思った……ありがとう、一樹、最後に……この力をお前に託す! だから、必ず……俺の願いを叶えてくれ」
そう言って、父さんは深い深い眠りについた。
◇◇◇◇◇
「本当に唐突だもんな……父さんは」
この託された力で俺は、良い事もあったし、悪い事もある。
だけど、そんなことはどうでもいい。
父さんが俺のために、与えてくれた力。
その事実が俺にとって、嬉しいことだから。
「それじゃ……そろそろ帰るよ、またな、父さん」
そう言って、俺はこの墓から去って行った。
さて、帰るとするか俺の家に。
「やばいな、かなり遅くなっちまったな」
いろいろと考えているうちに、時間帯は完全に最終下校時間は過ぎていた。
このままでは、補導の対象だ。
そうなると、厄介だ。
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