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夜の月が空から出ていた。
いつもなら、今は完全に家にいる時間。
でも、今日は違った。
何故なら、俺の帰り道はクラスの二人に、遮られていたからだ。
とてもじゃないが、仲良く話しているような雰囲気ではない。
それに、水上の発言も気になる。
俺は、息を殺しながら、その二人の会話をじっと聞くことにした。
「もう、やめようよ……こんなことして、何が楽しいの?」
「は? お前さ、誰に口聞いてるの?」
「ぐは!」
すると、突然加賀美の体は、路地裏の汚い壁に叩きつけられた。
何も抵抗することは出来ない。
まるで、何かに縛り付けられているような感じだった。
「どうだ? 俺の超能力……『天風力』(ウインドウォールー)は?」
「や、やめてよ」
「ほらほら、何かしないと、どんどんと強くなっていくぜ?」
「がぁぁぁ!」
言葉通りに、加賀美は徐々に苦しそうな表情になっていく。
さすがはSランクの超能力者と言ったところか。
威力も精度も桁違いだ。
このままじゃ、あいつがやられてしまう!
正直、俺と加賀美はそこまで仲良くなんてないし、話した事もあまりない。
他人だ。
そんな他人のために、自分の身を削ってまで、助けるなんておかしなことだ。
そうだ、ここで引き返せば、まだ間に合う。
さあ、引き返すんだ。
怪我なんてしたくないだろ? 傷つきたくないんだろう?
だったら、引き返せ。
でも……それは俺が許せない。
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