第1章

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 夜の月が空から出ていた。  いつもなら、今は完全に家にいる時間。  でも、今日は違った。  何故なら、俺の帰り道はクラスの二人に、遮られていたからだ。  とてもじゃないが、仲良く話しているような雰囲気ではない。 それに、水上の発言も気になる。  俺は、息を殺しながら、その二人の会話をじっと聞くことにした。 「もう、やめようよ……こんなことして、何が楽しいの?」 「は? お前さ、誰に口聞いてるの?」 「ぐは!」  すると、突然加賀美の体は、路地裏の汚い壁に叩きつけられた。  何も抵抗することは出来ない。  まるで、何かに縛り付けられているような感じだった。 「どうだ? 俺の超能力……『天風力』(ウインドウォールー)は?」 「や、やめてよ」 「ほらほら、何かしないと、どんどんと強くなっていくぜ?」 「がぁぁぁ!」  言葉通りに、加賀美は徐々に苦しそうな表情になっていく。  さすがはSランクの超能力者と言ったところか。  威力も精度も桁違いだ。  このままじゃ、あいつがやられてしまう!  正直、俺と加賀美はそこまで仲良くなんてないし、話した事もあまりない。  他人だ。  そんな他人のために、自分の身を削ってまで、助けるなんておかしなことだ。  そうだ、ここで引き返せば、まだ間に合う。  さあ、引き返すんだ。  怪我なんてしたくないだろ? 傷つきたくないんだろう?  だったら、引き返せ。    でも……それは俺が許せない。
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