第1章

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「ふぅ……なんとか、逃げられたようだな」  俺は息をきらしながら、走ってこんなことを一言つぶやいた。  あのとき投げた物は、『電気網』(サンダーネット)と呼ばれる物で、主に護身用として発売されているものだ。  形は丸い形で、地面に投げるとそこから、黄色い、くもの巣みたいな網が出てきて、同時に強烈な光も発生する。  それによって、俺は水上の攻撃を防げられたし、あの場から逃げられたというわけだ。  あれだけの、超能力者だ。  普通の超能力では、まず相手にならない。  だから、意表をついたまでのこと。  多分、水上は自分の力に自信を持っているだろ。  だが、それは俺にとってのチャンスだった。  まさか、Eランクの俺にSランクの自分が、負けるはずもないし逃げられることなんてない。   「甘いな、何もかもが」  俺はこう言いながら、一人で笑っていた。  このままいけば、この路地裏からも抜けられる。  そうなれば、もうこっちの勝ちのようなものだ。  しかしそう思ったときだった。 「お前こそ、甘いんじゃないの? ゴミ」 「……! やっぱりそう簡単には逃げられないか」  すると、もう路地裏を抜ける寸前のところで、上空から水上が自ら作った風にのって俺を見下していた。 「さっきは、あんなゴミの考えそうな作戦に、はまってしまったが、今度はそうはいかないぜ」 「いや、なかなかうまくはまってくれたな……見えたぜ、お前の焦っている顔」 「……どうやら、命だけは助けてやろうと思ったが、変更だ! お前ら殺す!」  俺の発言に対して、完全に水上はきれたようだ。
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