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松美の後ろでマネキンのように無表情で立ち尽くす清菜を黒斗は覗き見る。
その間にも松美が、清菜の状況を こと細かく説明する。
「もちろん、警察には相談したであります。清菜さんが精神的に参っていると伝えたら、こちらでもメールの送信者を特定してみますと仰っては下さいました。
しかし結果は この通り、何も変わっておりません。そもそも あの警察の方、様子がおかしかったので私、はなから あてにはしておりませんでしたが」
「警察の様子がおかしい……って……どんな風にですか?」
首を傾げる玲二の脳裏に、恵太郎の事件の後に警察から事情聴取を受けていた時の様子が鮮明な映像となって映し出される。
“そうかそうか、死神に襲われたから拳銃を使ったのか。それは正当防衛だ。だから君は無実だ”
玲二の言葉を何一つ疑うことなかった警官。
その警官の瞳に光は無く、死人のように血の気が失せて青ざめた頬が印象的だった為、この出来事は よく覚えている。
あれから2ヶ月は過ぎたというのに、この腑に落ちない出来事に関する疑惑は未だに しこりの如く玲二の心に残っているのだ。
まさかとは思いながらも、玲二は唾を呑んで松美の言葉を待つ。
「どんな風にと言われましても……何と言いますか……とりあえず、発する言葉も感情もないような棒読みで、顔色も まるでゾンビのごとき悪さでしたよ。思い出すだけでも気色悪いぜ……であります」
「っ!」
松美の言葉に息を呑む玲二。
同じだった。
感情が感じられない無機質な声。
生気を失ったような青白い顔。
──嫌な予感がする。
玲二の直感が そう語りかける。
清菜の兄は変死事件で死に、あの おかしな警官が他にも居る――もしかしたら――
また、大神が絡んでいるのではないか?
もし そうだとしたら、松美も清菜も内河も危ないだろう。
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