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一方、その頃
「ガハッ…………ゲホ、ゴホ……」
「ハアッ……ハアッ……」
満身創痍(まんしんそうい)の状態で床に倒れている黒斗と、そんな彼を血濡れたナイフを持って見下ろす恵太郎。
先程 撃たれた右足は まだ大丈夫なようだが、ビクンビクンと震えている。
恵太郎も傷は負っているが、その殆どが殴打痕である。
ダメージは深いものの、やはりナイフで何度も刺されている黒斗の方が重傷だ。
「ハハッ……ゴキブリ並みの生命力だなあ。いい加減に くたばっちまえよ! その方が楽になるぜ?」
「…………戯れ言を…………」
瀕死の状態でありながらも、黒斗の眼光は未だに鋭いままだ。
「こんなんじゃ、橘よりも お前の方が死にそうだなあ、アハハ」
ナイフをクルクルと回しながら言う恵太郎だが、黒斗は動じる様子も無く、彼の言葉を鼻で笑い飛ばした。
焦りが見られない黒斗の態度に苛立ったのか、恵太郎は不機嫌を露に彼を睨みつける。
「何を余裕ぶっこいてんだよ。お前さ、今は絶体絶命のピンチなんだぜ? もう少し慌てろよ!」
「……慌てても状況は変わらないさ…………それに、全ては佐々木に託したからな…………あとは、結果が出るのを、待つ、だけだ……」
「あんな薄のろ豚を期待してんのかよっ!? 死神様も堕ちたもんだなオイ!」
腹を抱えて笑いだす恵太郎。
「……アイツは、きっと上手くやる…………俺は、そう信じてるからな……」
そう呟いた黒斗の頭を、恵太郎は思いきり踏みつけた。
頭部に鈍い痛みがはしるが、黒斗は歯を食い縛って耐える。
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