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「何が“信じてる”だよ! クッセーことを言いやがってよ! 薄ら寒いんだよボケ!」
「っ…………お前にだって、信じている人間が、居ただろう……! お前の……兄が……!」
「兄ちゃんはもう居ないっ! お前が殺したからな!! お前が兄ちゃんを……俺から奪ったんだ!!」
黒斗の頭から足を離すと、恵太郎は強く彼の頭を蹴飛ばした。
勢いに押されて黒斗の身体が転がり、口の端から血が流れる。
「兄ちゃんを殺しておきながら、『俺は間違ってない』って顔をしやがってよ! 裁きだなんだカッコつけても、テメエは ただの人殺しだっ!!」
感情を爆発させ、黒斗に強い憎悪を秘めた目を向ける恵太郎。
そんな彼を見つめる黒斗は、満足そうに口角を吊り上げた。
「……良い憎悪だ…………そんなに俺が憎いか?」
「憎い……憎い憎い憎い憎い憎いっ!!」
今の恵太郎を支配するのは、兄を殺した黒斗への憎しみ。
そこにパーツの意思は無く、恵太郎の純粋な復讐心だけがあった。
玲二が右足の目玉を1つ潰してくれた お陰で、パーツの洗脳が弱まり、恵太郎の自我が強くなったのだろう。
「……憎いなら、許せないのなら……仇をとってみせろ……!! 他の誰でも無い、お前自身の手で! お前自身の意思で!!」
「偉そうに言ってんじゃねえよっ!!」
そう怒鳴ると恵太郎は黒斗へ近づき、彼の右足を目掛けてナイフを振りかぶった。
──それで良い
──自分自身の意思を、信念を持って ぶつけてくるがいい
──俺も己の信念を持って、お前を迎え撃つ
──これは正義と悪の戦いではない
──信念と信念のぶつけあいだ
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