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黒斗が恵太郎を煽っている頃、玲二は物置部屋の中で四角形の鉄の箱の中に隠れて息を潜めていた。
あれから大神に見つからないよう慎重に動き、彼の足音が聞こえたら部屋や物陰に隠れたりして やり過ごしていた。
今の所、何とか見つからずには済んでいるものの、やはり隠れながら進んでいる為、思うように進めず時間ばかりが経っていく。
(こんな所で……手間取ってる場合じゃないのに!)
あまりにも もどかしくて叫びたくなるも、そんなことをしたら気付かれるのでグッと堪えて耳をすます。
カン カン
(き、来たっ!)
大神の足音が部屋の外から聞こえ、玲二は手で口を覆って息を止める。
緊張感から心臓がバクバクと喧しく鳴るが、この心臓の音が外に漏れるんじゃないかと不安になる。
カン
部屋の扉の前で足音が止まる。
(えっ……う、ウソ……)
ここに潜んでいることがバレたのかと、玲二の全身から血の気がサーッと引いた。
滲む脂汗、鳴り止まない心臓、小刻みに震えだす身体。
(お……お母さんっ……!)
目を固く閉じ、母の姿を思い浮かべる。
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