659人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ざまあ……」
黒斗の顔を見てニヤリと笑う恵太郎。
しかし黒斗も また口角を吊り上げて余裕の笑みを浮かべている。
「…………お前の負けだ」
「はあ?」
恵太郎が間の抜けた声を発すると同時に、視界の下から濃い血が噴き出して目の前に居る黒斗の姿を覆い隠した。
「……っ!」
咄嗟に血が出ている方向へ視線を落とすと、自分の左肩から右脇腹にかけて袈裟懸けに斬られた傷口から血が出ていることが分かった。
さらに視界が揺れ、傷口の辺りから身体が ずれていく。
「うわああああぁああ!!」
悲鳴をあげながら、恵太郎の斜め上半身は坂道からずり落ちるように切断面から床へ落下した。
切り離された上半身が床に落ちると同時に高所から落とされたトマトが潰れたようにベチャッ、と血を ぶちまけ、身体に指示を出す脳を失った下半身は壊れた噴水のように鮮血を噴き出した状態で膝から崩れ落ちた。
その拍子に中途半端に切られた肺や肋骨(ろっこつ)、横隔膜(おうかくまく)と肝臓の一部分が飛び出し、鼻を摘まみたくなるような悪臭を周囲に漂わせる。
「…………ひ、ぐ……」
残った右指をピクピクさせる恵太郎の両目は、互いに違う方を向いていた。
「………………終わりだ」
心臓に刺さったままのナイフを おもむろに引き抜くと、それを床に投げ捨て、恵太郎の上半身に近づいていく。
が――
最初のコメントを投稿しよう!