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「何すんだよっ!! 父ちゃんも母ちゃんも、カエルで遊んでる所を見ても怒らなかったぞ! この俺様を叩きやがって……何様のつもりだよっ!」
「何様だって? お前の兄さんだよ!! お前こそ何様のつもりだ!? 何の罪も無い生き物の命を奪って、神にでもなったつもりかい?」
「そうだよ! 俺様は偉いんだ! 父ちゃんも母ちゃんも、俺様の言うことを何でも聞いてくれる! 俺様が一番偉いから……」
再び、恵太郎の頬を伸也が叩く。
「っ……! ざけんなよ!」
キレた恵太郎は伸也に掴みかかるが、逆に押し倒されてしまい、身動きが とれなくなってしまう。
「う、ぐ」
何とか伸也の拘束から逃れようと もがく恵太郎だが、不意に彼の顔に水が落ちてきた。
「………………え?」
前を向いた恵太郎は己の目を疑った。
何故なら伸也が、やるせない表情で涙を流していたから。
「…………恵太郎…………お前には、正しい道を歩んでほしい。強くなくても賢くなくても良い……人としての道を踏み外さなければ……!」
「……おにい、ちゃん……」
涙を流してまで弟を厳しく叱りつける兄の姿を見た恵太郎は、幼いながらも感じとった。
兄は本当に自分のことを大切に思っていると。
大切だからこそ、優しくするだけでなく厳しくも接するのだと。
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