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「…………兄ちゃん……優しくて厳しくて……最高の兄貴だった……。唯一の不満は、兄ちゃんは忙しくて なかなか構ってくれなかったことかな……。
だから兄ちゃんの気を引きたくて、悪さばっかり続けて兄ちゃんにワザと叱られるようにしたんだ……」
乾いた笑みを浮かべる恵太郎だが、黒斗は眉1つ動かさずに彼を見下ろしている。
「…………残念ながら、兄の思いは お前に届かなかったようだな」
デスサイズを振りかぶる黒斗。
「お前はやりすぎた。犯した罪に対する罰を受けてもらう」
素早い動きで恵太郎の頭部にデスサイズの刃を突き刺すが、恵太郎は悲鳴すら あげずに虚ろな瞳で何も無い前方を見据えている。
そしてそのまま、彼の身体は大きく膨らんでいく。
「…………………………兄ちゃん、俺、生まれ変わったら、今度こそ正しい道を歩むよ………………だから…………」
「もう一度、兄ちゃんの家族として生まれたいな」
その言葉を最後に、恵太郎の身体が破裂した。
けたたましい破裂音と共に血と肉が飛び散り、黒斗の全身や周囲を汚していく。
「……………………」
身体に掛かった恵太郎の“残骸”だけを魔力で消し去り、黒斗はデスサイズの血を振って落とすと、闇の中へとデスサイズを溶け込ませた。
唯一 形を残している恵太郎の下半身を一瞥すると、黒斗はゲートを開く。
“もう一度、兄ちゃんの家族として生まれたいな”
恵太郎の最期の言葉が脳裏を過るが、黒斗は首を振ってゲートを潜った。
──もう二度と……お前は生まれて来ない
──それが、何度も罪を繰り返した お前への罰だ
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