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何も言わず動かない彼女の様子に戸惑い、玲二は黒斗に助けを求めようとするが、いきなり誰かに抱き締められてしまった。
「うわわ! なになに!?」
心底 驚いた玲二が前を向き直すと、鈴が腕を広げて黒斗と自分を同時に抱き締めていることが分かった。
「す、鈴ちゃんー!?」
「……おい、橘……何のつもりだ……」
突然の抱擁(ほうよう)に戸惑う黒斗と玲二だが、鈴は涙を流しながら さらに腕の力を強める。
「うぅ……グスッ…………うわあああああん!! クロちゃああああん!! レイちゃああああん!! うえええん!!」
泣きじゃくる鈴。
鈴は恵太郎や大神の前では気丈に振る舞っていたが、内心 不安で仕方なかったのだろう。
何をされるのだろうかという恐怖感が あるのに、そのうえ恵太郎が黒斗を殺すかもしれないという絶望感や不安が加わっていたのだ。
鈴の精神の疲弊は計り知れない。
だからこそ親友2人の無事な姿を見て気が緩み、今まで流せなかった分の涙が出てしまったのだろう。
彼女の心情を察した黒斗と玲二は、何も言わずに鈴が落ち着くまで、気恥ずかしくも抱きつかれたままでいるのだった。
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