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「……ふう~、やっぱりシャバの空気は美味いなー!」
綺麗な満月が浮かんでいる夜空を見上げながら、暗い雰囲気を払うように明るい音声で言う玲二。
だが彼の気遣いも虚しく、黒斗と鈴が纏う雰囲気は暗く沈んだままである。
(……仕方ないよね……あんな怖い人でも、2人の友達だったんだもん……)
心情を察した玲二までも落ち込んでしまった。
「…………」
一歩 足を進める黒斗だが、鈴は扉の前で俯いているままだ。
彼女に声をかけようと近付く黒斗。
「橘っ!!」
その時 黒斗の顔色が変わり、鈴の腕を掴むと乱暴に後方へと投げ飛ばした。
「きゃっ……」
鈴が地面に倒れると同時に、顔に温かい液体が掛かり、驚いた彼女は黒斗の方へ視線を移す。
「………………えっ?」
黒斗の姿を見た鈴の表情が固まった。
同じく黒斗を見ている玲二も血の気が引いた顔で、身体をガタガタと大きく震わせている。
「……あ、あ……あにき…………」
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