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黒斗の背中から突き破って飛び出しているのは、鋭利な刃物の切っ先。
その切っ先は湾曲(わんきょく)している為、刃物の正体は大鎌であることが分かった。
そして、その鎌を持つ人物が誰なのかも――
「クロちゃ」
鈴が黒斗の名を呼び終わるより先に彼の身体から刃が抜かれ、傷口から噴き出した大量の血液が鈴へと掛かり、彼女の体を真紅に染めていった。
「あにきいいぃ!!!!」
玲二が叫ぶものの、その声が助けになる訳もなく黒斗は仰向けに倒れこんだ。
「…………イヤアアアアアアアアアアアア!!!!」
目の前に倒れる、青白い顔で口や胸から血を流す黒斗を見た鈴が頭を両手で抱えて叫ぶ。
「兄貴、兄貴っ!!」
玲二も黒斗の元へと駆け寄り、片膝をついて彼に声をかける。
だが彼は うっすらと目を開けているだけで、返事を返してはくれない。
「だめ、だめ、クロ、ちゃん、死んじゃダメっ」
パニック状態になっている鈴は身体が血で汚れることも厭わずに、黒斗の胸にある傷口を両手で押さえる。
しかし、それでも出血は止まらず次から次へと真っ赤な血が滲み出てくる。
「アッハハハ! どうだい月影、僕のデスサイズの味は? なかなかだろう?」
黒斗を刺した張本人である大神が、血濡れたデスサイズを持って得意気な表情で言い切る。
「…………よくも……………………よくも兄貴をっ!!!!」
憤怒の表情を浮かべた玲二が大神の頭に銃口を向け、引き金を引く。
だが彼が引き金を引いても弾丸は撃ち出されず、ただカチン、カチンと虚しい音を響かせるだけだった。
「それ、弾切れだよ……本当に君ってバカだねえ」
唯一の武器が使えないことを知り、玲二の全身から血の気が引いた。
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