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「イヤだあああああぁっ!! 助け、助けてくれえぇ!!」
「何でも するから!! 奴隷にでも何にでもなるっ!! だから命だけはっ! 命だけはああぁ!!!!」
床の下から聞こえてくる、命乞いをする悲痛な叫び。
その声は1人だけのものではなく複数人の老若男女様々な声であり、皆 死への恐怖と生への執着心から悲鳴のような叫び声をあげていた。
「………………」
自然と小刻みに震えだす身体。
それに呼応して、歯がガチガチと耳障りな音を立てながら噛み合う。
何百年も こんな声を聞き続けてきたのに、“心”というものは未だに この声に恐怖を感じるらしい。
俺自身は何ともないと、もう慣れたと思っているのに、心はそんな俺の意思を無視して恐怖の感情を全身に伝えていく。
「ぎゃあぁあああぁぁぁああぁあぁぁあああ!!!!」
耳をつんざくような野太い悲鳴、それに続く何かを粉々に砕くような鈍い衝撃音が響いて俺の肩がビクリと跳ねる。
「だずげっ!! びにだぐなっ……!!」
悲愴なる叫びに混じって聞こえてくるのは、人肉が潰れる生々しく気味の悪い音と痛々しい破裂音、そして肉が細かく粉砕され、ドロドロとした血液に変わっていく音。
やがて泥水を流すような音が聞こえてくると、それを最後に先程までの騒音が嘘のように この場が静寂に包まれた。
だが、その不気味な静寂は多くの仲間達が無惨に死んだことを意味しており、俺の恐怖感を和らげるどころか逆に煽っていく。
「…………」
抱えた両膝に顔を埋めるも、身体の震えは治まってくれない。
──明日は俺の番だ
──明日、俺は彼らが味わった痛みと恐怖、そして絶望と死を体験することとなる
──やっと苦しみから解放されるんだ
──だけど…………
──やっぱり、怖い…………死にたく、ない…………
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