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気でも狂ったか――誰もがそう思った時だった。
「死んじまえ」
恵太郎に一番近い場所にいた、刀を構えていた組員の首が飛んだ。
「……は……?」
視界の端に、鎖骨の近くから噴水のように血を噴き出して膝から崩れ落ちる仲間の姿が映り、組員達は絶句する。
「アハハハ、コイツも脆いじゃん」
宙を舞っていた男の頭を片手でキャッチして、恵太郎は笑う。
今の一瞬の間に何が起きたのか誰にも分からなかった。
首をはねられた組員は、恵太郎に一番近い位置に居たが、それでも距離は十歩分は離れていて隣接している訳ではなかった。
それなのに恵太郎は一瞬で組員に近づき、素手で彼の首をはねたのだ。
「あれ? どうしたの? まさかガキ1人にヤクザともあろうものがビビってる?」
手に持っていた首をゴミのように投げ捨てながら恵太郎が言う。
首が地面に落ちる音を聞いた組員達は我に返り、気合いを入れ直して武器を構えた。
「っ……怯むなあ! 殺れ、殺っちま……」
グシュ
拳銃を構えた中年の男性が叫ぶが、その言葉尻は何かがめり込むような音に揉み消される。
違和感を感じた腹部を恐る恐る見下ろすと、そこには人の腕が突き刺さっていた。
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