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「清菜、さん……貴方の お兄さんが死んだのは、清菜さんが関係して……」
震える唇で必死に言葉を紡ぐと、清菜はクスリと笑って頷いた。
「兄さんはね、うるさすぎたのよ。いつだって私のやること言うことを否定して、決して私を認めようとしなかった。だから この水を飲ませてやった。
仮に資格のある人間でも、過剰接種をすれば肉体に異変が生(しょう)じ、変死してしまうからね……フフフ……」
今まで見たことのない醜悪な清菜の微笑みと、彼女の犯した罪に言葉を失う松美。
大切な友達が人を殺しただなんて信じたくなかった。
だけど目の前で明かされているのは紛れもない真実であり現実だ。
いくら松美が耳を塞いでも、目を背けても、彼女が罪を犯した事実は永遠に消えない。
ならば どうする。
“殺人”という決して許されない罪を犯した彼女に、自分は友達として何をしてあげられるのか、何をするべきなのか。
松美は混乱する頭で必死に思案する。
「……ねえ松美ちゃん、兄さんのことなんか どうでもいいじゃない。それよりも私と一緒にアナスタシオス教団の同志として、楽園を創りましょうよ」
「なっ……何を言ってるのでありますか!!」
清菜の おねだりをするような甘ったるい口調に思考を中断させられた松美は、眉間にシワを寄せて怒鳴るが、清菜の顔には笑顔が張り付けられたままである。
「……清菜さん、よく考えるであります……! アナスタシオス教団のことは それほど詳しい訳ではありませんが、これだけは言えます!
教団の考えは危険であり、間違っていると! そして その教団に賛同している清菜さんも また間違っていると!」
「…………」
松美の言葉に清菜は何も答えず、無表情のまま彼女の顔を見つめている。
「この世界を……沢山の人が生きている この世界を破壊する権利など教団には ありませんし、人を変死させるような水を配っているだなんて……ただの犯罪者集団であります」
そう言い切ると、松美はボンヤリと立ち尽くす清菜の目の前に立ち、懇願(こんがん)の眼差しで彼女を見つめながら肩に両手を置いた。
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