Episode 10 拒絶

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「清菜さん……私は清菜さんに正しき道を歩んでほしいのであります。ですから お願いです。教団を抜け、お兄さんを殺したことを自首して下さい」 かつてないほど真剣な様子で松美が説得すると、ずっと黙っていた清菜が顔を俯かせてポツリと呟いた。 「……私達、友達なんでしょ? なのに何で……私と一緒に来てくれないの? 何で私に自首しろとか言うの? 友達なのに何で助けてくれないの、味方をしてくれないの」 俯いているせいで清菜の表情は見えなかったが、震えて裏返っている声から察するに、涙が流れないよう必死に堪えているのだろう。 だが ここで彼女に同情し、今までのように何でも言うことをきいてしまっては何も意味が無いと、彼女の為にも自分の為にもならないと松美は己に言い聞かせる。 「……友達が間違っていることをしてるのに無条件に味方をしたり、一緒に悪いことをするのは本当の友達ではないであります……友達なら、勇気を出して間違いを正すべきだと私は思います」 迷いなき目で清菜を見つめる松美。 彼女に罪を償わせ、人として正しい道に導くこと。 それが自分が友達として清菜に出来る唯一のことだと、松美は考えたのだ。 「清菜さん、お願いです…………私は、これ以上 清菜さんに罪を犯してほしくないであります」 俯いたまま こちらを見ようともしない清菜の顔を覗きこむ松美。 その時―― 「………………貴女なら私を分かってくれると信じてたのに…………悲しいわ」 「え?」 不意に言葉を発した清菜に驚き、一瞬 動きを止める松美。 すると その隙をついて清菜は松美の首を勢いよく両手で掴み、その勢いのまま彼女を床に押し倒した。 「せい、なさん……なにをっ……!」 馬乗りになっている清菜に首を掴まれた状態で、松美は苦しげに顔を歪ませながら清菜に声をかける。 だが次の瞬間、その開かれた口に清菜が持っていた小瓶を乱暴に突っ込まれてしまった。
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