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「……っ、! ん、んんんんんんんんんんんんっ!!!!」
小瓶の中に入っていた液体が口内へ、そして口内から喉へと流れ落ちていき、松美の体内へと入り込んでいく。
血と吐瀉物(としゃぶつ)と動物の糞などを混ぜ合わせたような悪臭と味に涙を流し、必死に清菜の小瓶を持つ手を引き剥がそうとするが、強い力で踏ん張っている彼女の手は無情にも離れない。
「私の味方をしてくれない奴なんか友達じゃない……アンタは……アンタだけは信じてたのに! アンタだけは楽園へ一緒に連れていってやろうと思ったのに……!」
「んぐ、ぐんんんぐん」
口が塞がれている為、何も言葉を紡げない松美。
その間にも液体は どんどん流し込まれていき、それに呼応するように額がズキリと鈍く痛んだ。
「……松美ちゃんのこと、嫌いじゃなかったよ。でもね、私……私……もう分からなくなった……皆が皆 私を責めて、私を悪者扱いしてきて、変われ変われと言われてばっかりで……!
私……今の自分を、存在を否定されてるようで……悲しくて、どうすれば良いのか分かんなくて……周りが皆 敵に見えて……!
だから……こんな誰も私を受け入れてくれない、理解してくれない世界なんか いらなくて……だから、教団に入るしかなかったのよ!」
(……清菜さん……)
頭が割れるのではないかと思うほどの痛みを感じながらも清菜を真っ直ぐに見つめ、彼女が吐露(とろ)している苦しみに胸を痛める松美。
確かに彼女は お世辞にも性格が良いとは言えなかった。
そのワガママで自己中心的な性格は、少しでも直すべきだと思ってはいた。
だけど――
だからと言って、頭ごなしに人格を否定するのは正しい方法だったのだろうか。
他に方法は無かったのだろうか。
清菜に非が無いという訳ではない。
しかし、彼女の家族もまた“間違い”をおかしていたのではないだろうか。
「……こんなもので良いわよね」
松美が痛みに堪えて思考を巡らせている間に小瓶の中身は半分まで減り、それを確認した清菜は松美の口から小瓶を引き抜きフタをする。
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